このコーナーでは、日常におこった、ちょっと「いい話」をご紹介しています。
「とある中3生との小さな奇跡」教育関係の仕事を続けてきたなかで少し心温まる話を一つ。
中3の10月に「今からでも入塾は可能でしょうか」と、御来校されたお母さんと男の子の生徒さん。話を聞くと現在の塾をやめなければいけないとのこと。テストや成績を見る限り相当下降していました。体験授業後、学力的にはなんとかなると判断し入学となりました。そこから私と彼との辛抱の一か月が始まりました。
次の期末テストまで一か月「どんな作戦を立てようか」と思っていた矢先から「無断欠席、寄り道、宿題忘れ」と問題行動の山積みでした。本人と面談を実施しその理由がすぐにわかりました。イラつくような目で吐き捨てるように「先生はみんな、僕ががんばっても認めてくれない」と話しだしました。誰も彼のことを見てあげなかったのでしょう。その場で学習計画表と国語の勉強のやり方を説明しこんなことを話しました。「次の期末テストまで先生たちの言ったことをやってみよう、それで結果が悪ければどんなことをいってもいい、先生たちのせいにしていい、だからこの一か月は必ず約束を守ろう」と。
本人は不思議な顔をしていました。それで、次の回から言うことを聞くわけがありません。私がとった方法は「本人の意思、考えを聞き認めてあげること、彼を絶対に否定しないこと」でした。補習に来ていなければ「学校の行事があったんだね、それならご飯を食べて一時間後に来よう、気をつけて来るんだよ」、宿題を忘れれば「もう一度やり方から説明しよう、10分程度かかるからお家に遅れると電話しなさい」など、考えられることはすべてやってみました。2週間ほどたつと「無断欠席、寄り道、宿題忘れ」は徐々になくなっていました。
そして期末テストになり、期末テストの結果を持ってきた彼は、恥ずかしいのかうれしいのか、もじもじしながら「結果です」と個票を見せてくれました。結果は、142点アップ、66人抜きでした。一緒に頑張った国語は96点もう少しで100点でした。私たちから「一生懸命やってよかったね」、「がんばればできるじゃん」と声をかけられると「うん、そうですね」とはにかんでいました。そして「先生、ちょっと」とよばれ、「どうした」と声をかけると、人を信用することを忘れていた彼から「先生、ありがとね」と感謝されました。
信用や信頼、絆といった言葉は美しいですが、それを実現させるにはどれだけの擦れ違いを重ねるのでしょうか。そこであきらめては講師は務まりません、だから教育に携わるのであればどれだけ「ただ甘やかすのではない無償の愛」を子供たちに注げるかではないでしょうか。信用や信頼、絆を生む源を大事にしていくことが難しいのでしょう。
これが大宇宙の片隅でおこった小さな奇跡です。ぜひ私たちと一緒にいろいろな奇跡を実現しましょう。